2018年1月18日木曜日

頚椎症・変形性頚椎症


頚椎症とは、頚椎に症状(痛み)の原因がある病気のことです。年齢的な骨性の変化がみられることから、変形性頚椎症ともいわれます。

加齢により頚椎の関節面の適合が悪くなると、首を動かすたびに過剰な刺激が発せられます。過剰な刺激は、筋肉や関節の緊張を高めながら、炎症をつくって痛みに過敏な状態となります。

頚椎の変化は誰にでもおこる生理的な現象です。そのため、骨性の変形が認められても、必ずしも症状が現れるとは限りません。頚椎症は、複合的な因子が重なって発症します。



頚椎症状として

頚椎や周辺組織には、たくさんの神経が分布しています。加齢による変形や変性によって可動性が悪くなると、動作に伴うキシミとして、過剰な刺激が発せられるようになります。この侵害刺激が緊張状態を高めながら、次のような症状をつくっていきます。

1) 慢性的に肩がこる
2) 首筋が痛い
3) 頭痛がする
4) 目がショボショボする
5) 耳鳴りがする
6) めまいがする
7) 同じ姿勢を長く続けていると辛い
8) 朝方よりも、疲れてくると具合が悪い

※ 頚椎の動きで症状が増悪する、動きが悪いなど「動作」に関連した症状が伴います。



神経根が刺激を受けると

脊髄からのびる神経が、椎間孔を出る部分は神経根といいます。頚椎症の変化により椎間孔が狭くなり、神経根が圧迫刺激を受け続けるなかで、神経根炎をおこすことがあります。

頚椎症が好発する下部頚椎からは、上肢に分布する神経がのびていきます。神経根炎が生じて物理的な圧迫刺激が増すと、次のような症状がおこります。

1) 首にズキンとした強い痛みがある
2) 首を反らせる姿勢で、症状の再現や増悪をみる
3) 手や指先がしびれる、感覚が鈍い、力が入りづらい



頚髄の症状として

脊髄は、椎孔が連なってつくられる脊柱管のなかを通ります。頚椎症の変化として脊柱管が狭小化し、頚髄が圧迫刺激を受けることがあります。こうして頚部で脊髄が障害を受けると、次の症状が現れます。

1) 両手がしびれる(初めは片側に現れることもある)
2) 指がもつれる
3) 手に力が入らない
4) 脚がしびれてもつれる
5) 歩きにくい
6) 階段が下りにくい

※ 病態が悪くなると排尿や排便の機能も低下することがある



治療院での適応

年齢による頚椎の変形が、痛みの直接的な原因なら、当治療院での保存療法は不適当か効果が小さいでしょう。

しかし、加齢による骨性の変化が予想されても、多くの痛みは、炎症・過緊張・循環障害など、可逆的変化が複合して生じています。当治療院では、以下のように施術の適応を考えています。

頚椎症状  加齢による一般的な病態は、施療は適応 〇
神経根症状 一概に不適応とはいえませんが、慎重に △
脊髄症状  禁忌または不適当、施術効果の持続なし ×



1.頚椎症状

加齢による一般的な病態は、適応。

当治療院がおこなう関節操作・矯正を中心とする施術は、とくに頚椎症状の機能障害には効果が期待できます。



2.神経根症状

不適応ではないが、慎重に判断。

神経根への圧迫原因が、椎間板の膨隆や炎症による腫脹なら、一概に不適応とはいえません。頚椎の可動性の回復をはかりながら血液循環を促していくことで、神経根への圧迫刺激は軽減するものです。

施術が適応する頚椎症神経根症状は、軽度の慢性化した病態のみです。また、長期間の圧迫刺激により神経根部の組織に変性がおこると、圧迫刺激がなくなっても症状が残ることがあります。



3.脊髄症状

禁忌、効果が持続しない不適応。

軽度でも脊椎症状がみられる場合は、原則として施療は禁忌としています。ただし、患者さん自身が脊髄症状について理解したうえで、つらい症状を少しだけでも軽減できれば来院される方もいます。しかし、施療リスクが高い病態のうえ、施術効果もあまり持続しないので、お勧めはできません。



頚椎と椎間板

頚椎とは、首の骨(椎骨)のことで、3つの役割を担っています。

1) 第1~7頚椎が積み重なり、頭を支える柱となっている
2) 脳からつながる脊髄を通す管(脊柱管)や、脊髄からのびる神経を通す穴(椎間孔)を構成
3) 上下の椎骨で関節をつくり、動きを方向づけている

また、第2頚椎よりも下では、椎骨と椎骨の間には椎間板がはさまっています。椎間板の中心には水分を多く含んだゼリー状の髄核があり、その周りを繊維輪という丈夫な組織が同心円状に幾重にも取り囲んでいます。

この椎間板は2つの働きをしています。

1) 椎骨の間にあってクッションの役割をもち、かかる衝撃を吸収している
2) 丸い髄核の上で、椎骨は自由に動くことができる

頚椎・椎間板のほか、靭帯・関節包・筋肉などを含めて首は構成されています。



変形しやすい特殊な関節

頚椎には、椎体の両背側にルシュカ関節があります。これは、頚椎だけにある特別な関節です。上下の椎体が関節を形成しているもので、神経根の出口である椎間孔に位置します。

ところが、年齢に伴う退行変性により、ルシュカ関節に骨棘が形成されることがあります。そして、椎間孔を狭くしたり、神経根を圧迫したりして刺激するかもしれません。



複合的な原因

頚椎にみられる「加齢に伴う骨性の変化」は、椎間板の変性から始まります。そして、頚椎は不安定になり、過剰な緊張をつくります。

この過緊張は筋肉を固くし、血液循環を悪くしながら炎症をつくり、痛み刺激に敏感な状態となります。

さらに、この痛みがさらなる緊張をもたらし、「痛みの悪循環」が形成されるなかで、靭帯や関節包の肥厚、椎間板の変性、頚椎の変形が進行していきます。

このように椎間板の機能低下から始まり、頚椎ユニットの構造的な変化へとすすみ、慢性化した複合症状がつくられていきます。

頚椎症は、年齢による頚椎の変形だけでなく、靭帯や関節包、椎間板や筋肉に変化がおよぶ複合的な病態といえます。

1) 椎間板の機能低下(厚み・柔軟性の減少)
2) 神経の出入り口の狭小化
3) 関節面の不安定化
4) 首の運動により、過剰な刺激がつくられ、緊張度が増す
5) 循環障害による慢性化した浮腫、炎症の形成
6) 痛み刺激に過敏になる
7) 痛みの悪循環が形成されるなかで、組織の弱化・変性が助長される
8) 骨棘などの変形、神経根部の癒着・絞扼・ねじれがつくられる



胸郭出口部への波及

頚部で神経が絞扼されると、上肢にシビレや知覚低下が現れます。絞扼される神経と部位には、椎間孔での神経根のほか、胸郭出口での腕神経叢があります。

頚椎症による痛みは、胸郭出口部の筋肉にも緊張をつくります。

椎間孔に問題がある場合、そこに負荷をかける頚椎の運動で、症状が増悪します。しかし、胸郭出口部の緊張に問題があるなら、頚椎の負荷をかけても、症状は増悪しません。また、腱反射・筋力低下は正常・知覚低下も生じません。

胸郭出口部の緊張は、腕につながる動脈(鎖骨下動脈)を締め付けるので、指先が冷えるようになります。けれども、頚椎症では、血管症状はみられません。


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