2018年1月25日木曜日

ぎっくり腰・急性腰痛症


突然、腰に強い痛みがおこる急性腰痛は、ぎっくり腰ともいわれます。ドイツ語では、ぎっくり腰を「魔女の一撃」と表現するそうです。

ぎっくり腰には、「あのときの・・・」という原因動作があります。その多くは、重い物を持ったり腰をひねったりして、強い負荷が腰部に作用したとき、筋肉や関節の椎間板が損傷を受けて、一撃を食らいます。

ぎっくり腰は炎症による痛み、

組織が損傷を受けると炎症がつくられ、痛みを発するようになります。痛みにより緊張が増すことで、さらに神経が過敏な状態となり、少し動くだけでもズキンとした電撃痛が生じます。

原因動作が思い当たらない、

ぎっくり腰は、単純に「外からの一撃」とは理解できません。たとえば、あの程度の動作で、ぎっくり腰に・・・」ということがあります。思い当たるような無理もしていないのに、急に」という訴えさえ少なくありません。

組織の弱化が下地に、

理由の一つとして、オーバーワークによる無理が少しずつ蓄積していくなかで、組織が弱化していたことが考えられます。そのため、何気ない動作でも簡単に組織が損傷を受けたのでしょう。

つまり、ぎっくり腰が発症した下地には、無理の蓄積や組織の弱化が隠れていたのです。それが魔女の正体なのかもしれません。



施術のポイント

腰痛への手技療法の効果について「有効」だと評価する研究報告は、世界中で数多にあります。たとえば、

米国では、カイロプラクティックは補完療法として、腰痛を抱える多くの人が施術を受けています。アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)の研究によれば、一部の人にはカイロプラクティック療法・脊椎矯正が腰痛に有効であるということが示されています(詳細:Spinal Manipulation for Low-Back Pain)。

しかし、ぎっくり腰(急性腰痛)と慢性化した腰痛は、同じように施術をおこなってはならないと考えます。



慢性腰痛とは異なる方針

操体法にも精通する誠快醫院 鹿島田忠史 医師は、急性腰痛への「指圧、カイロプラクティック、操体法、SPAT」について、次のように述べておられます。

経験した範囲ではこれらの理学療法も自発痛・運動痛が強いときには控えた方がよいと思われる。それは一旦炎症が完成したときにはいかなる刺激も炎症を増悪させ腰痛がかえって悪化するからである。多少なりとも痛くない運動範囲が生じたときには、カイロプラクティックやSPATなどによる骨格歪み矯正は治癒までの期間短縮や慢性化予防に効果が期待できる(鹿島田,2005)。

当治療院では、関節への運動操作・矯正を中心とした施術をおこなっています。ぎっくり腰では、この施療による刺激が痛みを増悪させる危険があります。そこで、鹿島田医師の理解を参考に「多少なりとも痛くない運動範囲が生じたとき」を目安として、ぎっくり腰の施術をおこないます。



1.受傷後3日以内、ズキンとした電撃痛への施術

〈関節操作は不適応 × 〉

急性期の炎症が強い病態では、患部を冷やし、固定し、安静を保つことが肝要でしょう。そのうえ、施術ベッドに横になるのも苦痛なときは、十分な施術もおこなえません。痛みをこらえて来院されて施術ができないようでは申し訳ないので、下記の場合は、当治療院での施術は不適当とお伝えしています。

・ からだを動かすとズキンとした電撃痛が走る

・ 寝返りをすることも容易でない

・ からだを動かしたくない、静かにしていたい

・ 受傷から3日以内の痛みである


〈施術の方針〉

ぎっくり腰は、急性期の炎症が痛みの根本にあると思われます。そのため、当治療院が主としておこなっている関節操作・矯正刺激は、この炎症を強くするリスクがあります。そこで、痛みが一番強い反応点(ツボ)に円皮鍼を貼り、持続的に痛み感覚を抑制するよう施術をおこないます。


〈効果の予測〉

円皮鍼による皮膚を介した抑制刺激は、表在性の痛みには有効です。しかし、深部性の痛みには効果が薄いかもしれません。つまり、当治療院での積極的な施術は、急性期の炎症症状が軽減し、痛みの主役が機能障害に移行する時期からが適応になります。その目安は、一般には受傷から3日目以降としています。



2.痛みによる過緊張への施術

〈慎重に短時間で △ 〉

急性期の炎症があるところは、腫れ・発赤・熱感・痛みが生じます。そして、「痛い痛い」と患部をもみほぐしながら、鋭敏な痛みを和らげることはしないでしょう(急性期の痛みに「もむ」は不適応です)。

けれども、痛みのある部位は、防衛反応として筋肉の緊張度を高くします。ところが、筋肉の緊張が強すぎると、やがて血液循環を阻害して痛みに過敏な状態をつくります。また、からだが防衛反応に終始していると、損傷した部位を治そうとする機能がうまく働きません。


〈施術の方針〉

急性期の強い痛みが落ち着いたら、筋肉の過度な緊張を適度にゆるめるよう、持続的な押圧刺激を施します。さらに、調子をはかりながら関節部に細かなマニピュレーションを加えます。こうして痛みの軽減をはかりながら、徐々に関節操作・矯正を施し、腰痛が慢性症状へと移行しないよう予防します。ただし、炎症を惹起させないよう施術時間は短くいたします。


〈効果の予測〉

当治療院の施術は、炎症や痛みそのものを消し去るものではありません。それは、早く炎症が和らぐよう自然治癒力が働きやすい状態を整える、または痛みが慢性化するのを予防するというアプローチです。ぎっくり腰は、何らかの原因により筋肉・椎間関節・椎間板が損傷されたことによる炎症が痛みの根本にあります。そのため、一回の施術で痛みが減った、ずいぶん良くなったという早急な成果は、あまり期待できないものとご理解いください。



文献

National Center for Complementary and Integrative Health(2013)Spinal Manipulation for Low-Back Pain.https://nccih.nih.gov/health/pain/spinemanipulation.htm,(参照日2017年3月16日).
鹿島田忠史(2005)急性腰痛への西洋医学的アプローチ.医道の日本,746:p.22-25.


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